フラワー長井線 さくらラッピング

始発の新幹線で降り立った赤湯駅のホームには、夏の日差しの中に満開の桜が咲いていました。これは山形鉄道フラワー長井線のラッピング車両のうちの一つ、南陽市の「烏帽子山千本桜」柄だそうです。フラワー長井線はその名の通り沿線に咲く四季折々の花々が美しいことが特徴で、この車両にラッピングされたような桜は春に各駅で見ることができます。
今回はいつもの旅客として利用するときとは一味違う、フラワー長井線の魅力を発見するために、一日駅員体験に行ってまいりました。

ラッセル車のある長井駅にて出勤!

長井駅

まず、本社のある長井駅にて駅員さんの制服に着替えて出勤です。鉄道むすめ「鮎貝りんご」ちゃんとお揃いの真っ青なかわいらしい制服です。この制服が着られるだけでも感激なのですが、なんと制服を着たまま駅員さんの体験ができます。
ラッセル車に乗ると専務の押切さんがラッセル車の特徴や運転の仕方を実演してくれました。ラッセル車の窓は船舶のような特徴的な丸い形をしています 。
その窓を思わずじっと見ていたら、押切さんに「スイッチを動かしてみる?」と聞かれました。思わず食い気味に「いいですか?!」と答えると「どうぞ!」と運転席に座らせてくださいました。おそるおそるスイッチを押してみましたが、なにが変わったのかすぐにはよくわかりません。それもそのはず、悪天候の中でもしっかりくっきり見えるようなワイパーのスイッチだったのです。車のワイパーのように存在感があっては視界が悪くなってしまうので、このような旋回窓になっています。なので、丸い窓は雪国ではよく見られるそうです。

長井駅でのラッセルモーターカー見学

次の駅員業務は団体で長井駅にいらっしゃったお客様のお出迎えです。
やってきた列車にむかって手を振って、降りてきたお客様に心からのありがとうございます!を伝える大切な業務です。山形鉄道の社員の皆さんのアットホームな雰囲気に包まれどのお客様も楽しそうに笑っていらっしゃいました。私もその雰囲気の一部になれていたかな(笑)

長井駅に到着する気動車をお出迎え
さらに、お客様全員が降りたのを確認した後、いきなりタオル即売会が繰り広げられました。これはさすがに予想外すぎて駅員業務を忘れて素で笑ってしまいました。「山形鉄道のために一枚でもタオルを買ってください!いいタオルですよ!」との呼び声に何枚も買っていくお客様もいらっしゃいました。

また、長井駅には鉄道模型や鉄道むすめフィギュアが展示されている売店もあります。お邪魔した際には『つなげて!全国“鉄道むすめ”巡り~鉄道制服コレクション~」』が開催されており、全国の鉄道むすめ達を見ることもできました。このイベントは来年五月末まで開催されているようなので鉄道むすめファンの方にもおすすめです。

鉄道むすめのフィギュア

駅員体験以外の余談になりますが、長井駅では硬券や各種補充券、記念切符など様々な種類のきっぷを購入することができます。私もお土産として珍しいきっぷをいくつか購入しました! また、長井駅周辺は馬肉が日常食として浸透している地域でもあり、馬肉チャーシューラーメンという珍しいラーメンもあるそうです。長井駅の硬券

お昼は皇太子夫妻も利用したという長井市タスパークホテルの最上階井井殿(せいせいでん) にて長井を一望しながらランチをいただきました。

タスパークホテルでの昼食

国鉄時代の雰囲気が残る「会いたい人に会えそうな」駅、羽前成田

お昼を食べた後は駅舎が有形文化財にもなっている羽前成田駅にお邪魔しました。そこで「おらだの会」会長の齋藤さんにガイドしていただき、国鉄時代の料金表や駅舎の構造についてじっくり見学させていただきました。

羽前成田駅
駅舎には駅茶(え?きっちゃ?)という休憩スペースがあり、コーヒーを片手に羽前成田駅の歴史が垣間見える写真を拝見したり、国鉄から第3セクターという移り変わりの中でどうしてこの駅舎が残ったのか、などの貴重なお話をうかがったりしました。
また、ここでダッチングマシンによる硬券への日付記入作業や入鋏作業も行いました。
齋藤会長をはじめ「おらだの会」では子供も大人も山形鉄道を楽しむことができるための工夫をしているそうです。

羽前成田駅の駅茶

ふらっと降りて、駅茶で一杯のコーヒーやお酒を片手に時間を忘れて一人静かに物思いにふけったり、ふらっと降りてきた別の誰かととりとめのない思い出話をしたりしたくなる、そんな駅でした。

羽前成田の旧駅名表示板

車庫で休む列車を下からのぞき見できる荒砥駅

最後に車庫のある荒砥駅にお邪魔しました。

荒砥の車両基地
列車に乗車したまま車庫に入る、という体験が初めてだったのでなんだかドキドキしました。車庫で下から眺めた車両は、乗ってきた車両と同じものだと思えないくらい大きく頑丈そうに見えました。いつもは見ることのできない連結器の動きを見せてもらったり、使っているけど知らなかったことを間近で見たり触ったりできました。

荒砥の車両基地での見学の様子

さらにここでは列車の運転席に座って汽笛を鳴らしたり記念撮影をしたりできます。朝から制服を着ていたこともあり気持ちだけは完璧な運転士です!(笑)

気動車の中で記念撮影
そして一歩車庫の外に出てみると、今は使われていない車両と使われていない線路がありました。この線路は国鉄左沢線左沢駅と国鉄長井線荒砥駅を結ぶ「左荒線」となる予定だった幻の線路だそうです。フラワー長井線の歴史を感じつつ歴史のIfに想いを馳せ、どこか切ない気分で車庫見学を終えました。

長井線終端。幻の左荒線

この後、荒砥駅から赤湯駅に移動し17時に駅員業務は終わるので20時前には東京に帰ることができます。
今回訪れた駅以外にも、フラワー長井線には可愛いうさぎ駅長「もっちぃ」のいる宮内駅やもう一つの文化財登録駅である西大塚駅があります。また、沿線の様々な駅の近くにある温泉で日帰り入浴ができます。

お疲れ様でした!

帰り際、「ありがとうございました」ではなく「お疲れ様でした!」という言葉が出てきて自分でも驚きました。お客様ではなく山形鉄道の一駅員になったかのような気分から出た言葉。名残惜しい、さよならと言いたくない、どの言葉でも言い表せないような濃い体験ができ、一日でフラワー長井線は私のとても大切な場所になりました。一日駅員体験で、沿線の人々の温かさを知り、普通の観光では知ることのできない駅や路線に対する社員さんたちの愛情や、「おらだの会」など新しい世代に長井線の歴史を伝えていく沿線住民の愛情を感じることができました。

この体験をぜひ分かち合いたい、多くの人に体験してほしい、そんな気持ちでいっぱいです。

もっちぃのハンドパペットと

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駅すぱモール